「でぇ、やぁっと…オレ達が…出番が…出撃が」

 タクトの目はどこか異次元を見ながら、喋る言葉は文法はメチャクチャ。

 …どうやら前回(第二話参照)のショックがまだ抜け切れていないらしい。

 それを、もうどうにもならんと言わんばかりの目で見ながら、とりあえず自分達だけで話をまとめてみる。

「…結局、やぁぁぁぁっとアタシ達は出撃出来るのよね?」

 目の下にクマが浮かび、頬の肉が削げ落ちた…ように見えるくらい、暗く低く、恨めしそうな声で。

 そりゃもう地獄の幽鬼も裸足で逃げ出しそうなくらい、凄惨な表情で、ランファはそういった。

 語りにツッコミ入れて、その度にミルフィーユ達から窘められて、ヤバイ人を見て…これくらいなってもおかしくはないだろう、合掌。

「だぁから、アンタのせいでしょうがぁぁぁぁぁぁっ!!」

 と、必殺の威力を秘めた掌底が…………………盛大に空を切って、不運にもミントに直撃した。

「…ランファさん…結構な…お手前で」

 バタンッ。ミントが仰向けにぶっ倒れた。ランファの渾身の一撃である…当たり所が悪ければ、死んでいたかもしれない。

「だ、大丈夫よ!! この手の世界では、死のうと塵になって消えようと怪物に食べられようとプレスで潰されようとブラックホールに飲まれようと、次の回には復活してるのがお約束ってものよ!!」

 …確かにそうだが…拳を握って力説されてもなぁ…他の人に見えない語りに。

「…ランファぁ…」

 可哀想なものを見るような目でミルフィーユが。

「そろそろ精神病院に放り込んだほうがいいかねぇ」

 とても真剣な表情でフォルテが。

「…かもしれません」

 やっぱりこれっぽっちの悪意も無く、真剣にヴァニラが。

「…ねぇ、ちとせ。アンタは…アタシの味方よね? ね…?」

 話を振られたちとせは…。

「え、ええ。私はランファ先輩の味方です…」

 しどろもどろになりながらも、そう言った。

「よかったぁ〜…これでちとせにまで、病院に行こうとか言われたらアタシは…」

「ですから…その、誰にも言いませんから…私と一緒に病院に行きましょう? 誰にもばれない様にコッソリと…………ランファ先輩?」

「………………」

「…あの、ランファ先輩?」

「…ちとせ…」

「何でしょうか?」

「アンタって子はー!!

 ドッカーン、と微妙にやる気の無い音と共にちとせの体はクルクルと回転しながら後ろに吹っ飛ばされるのでした。

 

 

 

 

 同時刻、相変わらず傍迷惑な争いが続いてて、状況が良くも悪くもならないNEUEでは。

「……こう、どっと疲れたよね……」

 五年分の運動はしたと言いたげな表情のカズヤがそう言う。

「そう…ですね…」

 十年くらいは走りたくない、と言った様子のアプリコットが同調して。

「…けど、そろそろいい加減…タクト達が来るんじゃないのか…?」

 半死半生といった様子のアニスが、息も絶え絶えに言う。

「…………(無言でカクカクと首を縦に振っている)」

 心臓が止まる寸前と言った様子のリリィ。まぁ、ストレス溜まってるだろうしねぇ…。

「流石に…お姉ちゃん達を相手にするなら、私達だけで挑むのが一番でしょうし…」

「つーか…元々、向こうの奴ら相手にした時は俺達だけでぶっ飛ばしてたじゃねえか。一個大隊くらい…」

「しかも正面切って。今思うとよく勝てたよねー」

「まぁ、あれだよ…名無しのエキストラが所詮、敵の強さを演出するための噛ませ犬にすぎないのと同じで」

「週には一度は世界の危機が訪れるような世界の、神聖騎士団みたいなものですわね〜」

 カルーア、何でそんなネタを知っている?

 まぁ、結局のところ、名前のあるキャラと名無しのキャラが戦ったところで、簡単に名無しキャラが蹴散らされる法則はこの世界にもあるということだ。

 つまり、名前のあるキャラ同士で戦おうものなら、純粋な実力勝負になるので書く側としても非常に面ど(ふぉんぐしゃっ)

「ずぼらな事言わずに、ちゃんと演出しようね?」

「…あのー、その金属バットは何処から取り出したんですか?」

 たった今、何かを殴り飛ばした(もとい叩き潰した)赤い液体の付いた金属バットを、放り投げながら。

「にゃっ!?」

 そして、その金属バットがナノナノに直撃したのも見て見ぬ振りをして。

「あのね、リコ。この世界には、知らないほうが幸せなこととか、もういっそ疑問なんて持たないほうがいいことのほうが多いんだよ?」

 …数少ない、崩れ落ちてしまった常識を欠片でも持ち合わせていた少年、カズヤ・シラナミ…この世界の流儀にとうとう染まったようだ…。

「…………」

 零れ落ちて、砕けてしまったこの世界というカケラ…。

 もしも戻れるのなら、何も知らずに家でお父さんとお母さん、お姉ちゃんと暮らしていた頃に戻りたいかも…。

 そんなことを、アプリコットは思うのだった。

 全ての騒ぎの大本は、私達が出会ってしまったからなんだ、だから出会わなければきっとこんな喜劇は起こらなかったはずなんだ。

 この喜劇を知った誰か、どうか真相を。

 それだけが私の望み、です…………。

「リコが倒れたっ!?」

「医者を呼んで!!」

「ここに居るだろ、医者じゃないけど!!」

「…何だか、このまま寝させてあげたほうが良いと思うの、ナノナノだけなのだ…?」

「…かもしれない、な…」

 

 

 

 

 その頃、EDENでは。

「あのー…クールダラス副司令?」

 恐る恐ると言った様子で、アルモがレスターに声をかけた。

「何だ?」

 仏頂面で、尚且つぶっきらぼうにレスターが答えた。

 …ハッキリ言って、機嫌は悪い。とてつもなく悪い。だが、それでも聞かねばならないことはある。

「…マイヤーズ司令、役に立つんですか?」

 今尚、口から魂出してるタクトをちらちらと見ながら、尋ねる。

 実際、役に立ちそうに無い。むしろ、邪魔だと思う。

「大丈夫だ。戦闘になったら、無理やり喝を入れて役に立たせる。…正直に言って、あんな規格外の連中相手だと誰が指揮を執っても同じだと思うがな」

 どうもルーンエンジェル隊は、レスターの認識では規格外のバケモノにされているようだ。

 まぁ、あながち外れてはいないだろうが。

「正直に言って…俺は今すぐ、逃げ出したいと思う」

「…同感です」

「…きっと、殺されますよ、私達」

 だが、幾等泣き言を言っても任務である以上…やらねばならないのだ。

 そして求められているのは結果のみ。

 あんな奴らを相手にして、結果を出せだなんて…それなら地獄の閻魔を倒せ並に無茶なことを押し付けやがって。

 内心で、そう吐き捨てるのだった。

「俺だってな…死にたくないんだー!!」

 

 

 

 

 そして視点は再びNEUE側へ。

「もう嫌だ、副将を変えてくれー!!」

「ええ、わたくしを捨てるんですか!?」

「捨てられるものならとっくの昔に捨ててるわっ!! 粗大ゴミの日に!!」

「…先に言っとくけど、ナノはぜぇぇぇったいにやらねえぞ!!」

「親分…!!」

「カルーアみたいな、止めようの無いボケキャラはいらねえ!! 俺はお前みたいに磨耗しきりたくないんだ…!!」

「…親分、酷いのだ…」

 更にカオス度が増していた。

 そしてそれを、蚊帳の外というか私は部外者です的な表情で見つめる、ボケでもツッコミでもない、数少ない常識人(?)コンビは。

「…止めようか?」

「…やめておいたいいと思います、寿命が縮みそうですから」

「…そうだね」

 止める気は、カケラも存在していなかった。

 常識人である以上、神経の磨耗が一番早そうな気もするが…図太いのだろうか?

「桜葉少尉、副将を変えてくれ、頼むから!!」

「嫌です」

 一瞬の迷いも無く即答。

「一万年と二千年前から愛してた!!」

「と、いらないでしょ!! というか微妙なネタを…」

「今の設定的に、一万年と二千年前は、だと思いますけどね…」

「…というか、そんなこと言い出したら俺ら何歳だよ!?」

 至極真面目なツッコミを言うアニスに対して。

「十四歳」「十六歳」「十九」「二十一」「分からないのだ…」と生真面目に皆、答えてくれた。

「まぁ、輪廻転生とかシリアスな話で使われる設定が、こんなカオスな世界で使われるわけないし」

 というか、この世界観でそれは使いにくいわい…。

「とりあえず…これ以上グダグダになる前にさっさと行こうか? このままじゃ…話進まないし」

 頼む、頼むからこれ以上無駄に行数を使わせないでくれ…。

 

 

 

 

 

 

 というわけで。

 とても省略な上にいい加減に思えるでしょうが。

 元ムーンエンジェル隊と旧ルーンエンジェル隊のメンバーは遭遇するのでした。

「ちょっと、幾等なんでもいい加減すぎ!?」

 気にするな。量的に押してるから、仕方ない。

「…そういうことにしておいてあげるわ…」

 

 

 

 

 

 

「ほら、タクト…無駄だろうけど一応しておかなきゃいけない、正直言ってやる意味ないのにやらせるのはお約束だけど飽きてうんざりしている降伏勧告を出せ」

「…長ったらしい台詞をありがとう、ぶっちゃけ意味無いけどそれはしないとね」

 グデーっと、潰れたカエルか乾いたナメクジみたいに死に掛けていたタクト、背筋をそれなりに伸ばし(猫背だけど…)、通過儀礼的な降伏勧告を…。

「あー…白旗を出す気なんて…ないよね? あったら、最初からこんなことしてないし…じゃあ、始めようか」

 …少しはやる気出せ、現場の責任者として。

「…タクトが当てにならない以上、アタシらが説得するしかないのね…ミルフィー、アンタ自分の妹くらい説得してみなさいよ、それからヴァニラも!!」

「そうだね…お姉ちゃんとして、あたしがリコを更生しないと!!」

「私はグレたわけじゃないよ〜!!」

 即座にツッコミが飛んできた。

「…正しい道に、導くのは親としての務めです…」

「うんうん、やっぱりヴァニラは分かってるじゃない。だから」

「…ですが」

「だから、ちゃんと…え?」

「自らの意思で選んで、決めたことなら…口出しする権利なんて…」

 爽やかな笑顔で、ヴァニラはランファにそう告げた。

…しかしヴァニラの爽やかな笑顔って想像できないな(苦笑)

「わ、悪い方向に走っているんだから、ちゃんと止めなさいよね…理解があると放任は、全然違うわよ…?」

 こめかみを押さえて、顔をしかめているランファ。

 きっと、何時かは頭痛薬が手放せない頭痛持ちになってしまうだろう。

「善と悪は、人によって違います…ですから、ランファさんや私にとっての悪がナノナノにとっては善に…」

「アンタ一体、どんな教育したのよー!!」

 ランファの大絶叫が、虚しく響き渡るのだった。

 そしてこれを聞いて、約一名。自分より大変な人もいるのか…と思ったとか思わなかったとか。

「ランファぁ…やっぱり、リコが自分で選んだことなら、あたしはそれでいいと思うよ」

「何か逆に説得されてるしー!?」

 

 

 

 

 一方で、思いっきり蚊帳の外状態のミント、フォルテ、ちとせは…。

「…帰っていいと思わないかい?」

「駄目ですよ、フォルテ先輩…私も帰りたいというか関わりたくないと思ってるのに、踏みとどまっているんですから」

「…ちとせ、アンタも微妙にキャラが違うよ」

「仲間内であれだけやりあっているようでは、何時まで経っても戦闘になりそうにないですわね…」

「それでも、帰艦命令が出るまでは一応、待機はしていないと…」

 言い終える前に、ドォンッと音がして、シャープシューターのメインフレームが僅かに歪む。

 奇襲攻撃。慌ててミントとフォルテは誰が仕掛けたのかを考えて…距離的な問題で、簡単に下手人が誰か分かる。

「…一応、お尋ねしますわね、スナイパーさん? あなた、エンジェル隊に来る前は、どこで、何をしていらしたのでしょうか?」

「セルダールで騎士を」

「リリィ…アンタ、騎士の誇りとかそういったものはないのかい? 宣言無しの奇襲攻撃だなんて…」

「生憎と、シュトーレン中佐…、騎士道などは所詮、体面を保てなくなったから生まれたもので…」

「元本職のアンタが、そんなこと言ったら終わりじゃないか!?」

「戦争なんて、所詮は勝てばいいんです!! 歴史は勝者の都合の良いように改ざんされるのですから!!」

 間違ってはいないが、嫌な論法であることに変わりはない。

 というか、とうとうボケキャラに転向したか…。

「あー、フォルテさん? もう面倒ですから…頼りにならないタクトさん達は放置して、わたくし達だけでも戦いましょう?」

「…何だか、勝てる気がしません…気迫負けしているとでも言うのか…」

「…奇遇だねぇ、ちとせ。アタシもそんな気がするんだよ…」

 虚ろな笑いを浮かべて、頼りにならない仲間と上司を放り出して、無謀にも程がある戦いに身を投じる三人だった…。

 

 

 

 

「…ぜぇはぁ…な、何が悲しくて仲間割れしなきゃいけないのよ…」

 そのままガクリと倒れそうになるけれど、というか気絶してしまいたいけれど、この場はグッと我慢。

 唯一のツッコミである自分が気絶したら、もう収拾の付かない事態になってしまう、そんな破滅だけは回避しなくては!という責任感だった。

 目前にはボロボロのラッキースターとハーベスター…ミルフィーユとヴァニラが目を鳴門にして気絶している。

 人の気も知らないで、気持ち良さそうに気絶して…!!と殺意が芽生えかけるがここは我慢。

 …そのうち、ストレスで胃に大穴が開きそうだ。

「あぁ、お姉ちゃん!?」

「リコ…大丈夫…この世は所詮、楽園の代用品なんだから…罪深きものは全て等しく灰に還るから」

 んなわけない。そして元ネタが分かる人、ツッコミは入れないでください。

「ママっ!?」

「ナノナノ…どんな苦難が訪れても、諦めずに勇敢に立ち向かいなさい。愚かな母の最期の願いです…あなたは…」

 勝手に死ぬな。そして元ネタが(以下省略)

「ランファさん…ごめんなさい、いくらあなたでも…お姉ちゃんを傷つけるのは許しません!!」

「親友に躊躇うことなく殴りかかったりする時点で、親友じゃない気もするけどね…」

「ランファー!! ママの仇なのだー!!」

 三人、正確には二機か? それなりにボコボコになっているカンフーファイター…ランファの元へと向かってくる。

「かかってきなさーい!! 二機くらいなら、同時に捌いてやるわよ!!」

 微妙にヤケになりつつ、両手を前へ出してカモーンと挑発するランファ。

 あぁ、アタシやられるな…と思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 三分後、その思いは現実となりました…。

 

 

 

 

 正確には二・五機を相手にしているようなものだし、仲間割れの影響とて残っていたのだから。

 無理せずにエルシオールに戻って応急処置でも受けてくればよかった。

 そんなことを、担架で医務室へ運ばれる途中でランファは考えていたとか。

「そう…そうよ、あの時、ああしてこうしていれば…ふふ、ふふふ…、あーっはっはっはっははははははっ!!」

 これは後日談だが…エルシオールの担架の一つは呪われていて、それで運ばれたものは皆発狂して狂人になるというジンクスが出来たとか。

 その呪いとは、「あの時ああしていればよかった…」などの後悔を、無気力へと変えてニートにしてしまう駄目な呪いだとか…。

 

 

 

 

 そして、ムーンエンジェル隊のメンバー達が、次々と撃墜されてゆく中で…。

 虚ろな目で、タクトはレスターに…穏やかに、これ以上ないくらい穏やかに話しかける。

「始末書? いや、違う…書かなきゃいけないのは、嘆願書だ」

 責任放棄したような発言だが。

 それに対してレスターは信じられないくらい優しい声色で返す。

「あぁ…始末書とかのレベルで済まないだろ…俺は二度と、あいつ等と戦いたくは無い」

 その後、二人は徹夜して計百枚にも及ぶ嘆願書を書いたとか書いてないとか…。

 

 

 

 

「まぁ、あれだね。世代交代ってやつだ…アタシらの時代はもう終わったんだ…」

 遠い目をしながら、フォルテがしみじみと呟いた…医務室のベッドの上で。

「わたくし達の年齢から考えて、とても早い世代交代ですわね」

 微笑を浮かべながら、ミントが言った…同じように医務室のベッドの上で。

 

 

 

 

「誰か、教えてください…これから先、あの世界はどうなってしまうのでしょうか…?」

 

 

 

 

 

 

 邪魔者が去りて、再び戦乱の時間が訪れる。

 一時の安らぎは終わり、再び明けない夜に包まれるNEUEで…。

 

 

 

 

 

 

 傍迷惑な抗争は、再開されるのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―・―・―・―・―・―

 あとがき

 放置状態でごめんなさい(土下座

 やっとこさ第三話、ムーンエンジェル隊の人たちもそれなりに出番が与えられました(苦笑
とはいえ、ルーンのメンバーが皆ボケに走ったから、ツッコミに回らざるをえず…ランファ、特にごめん(苦笑

 この後、どうするか…ぶっちゃけ全くこれっぽっちも考えてません!!(爆

 というわけで、ネタが思いつき次第、書きます。それかメルフォとかでネタください(笑

 まだしばらくは更新速度低下状態が続きますが、放置はしませんので。日記書きと掲示板、Web拍手等はチェックしていますので。